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COVID-19からの教訓

IoT、デバイス管理、高性能組込みコンピューティングがもたらす新たな常識

世界中でCOVID-19 (新型コロナウィルス) の感染が拡大する中、あらゆる業界/産業が試練の時を迎えています。私たちはこの非常事態から何を学べるでしょうか。すでに以下のようなマクロ的課題が浮かび上がっています。

 

  • 遠隔医療の普及と定着
  • デバイス管理による事業継続性の確保
  • 公衆衛生管理で存在感を増すロボットとAI
  • より高い機能が求められるエッジコンピューティング

 

では、それぞれの現状を見ながら考察していきたいと思います。

遠隔医療の普及と定着

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遠隔医療では、通信技術を通して、患者側のセンサやアプリケーションから得られる情報を基に医療ケアを行います。新型コロナウィルスの感染拡大以来、病院、緊急治療室、そして医師たちは数千もの患者を受け入れ、医療の現場は多大なストレスにさらされています。遠隔医療が導入できれば、比較的軽症な患者の診察をリモートで行うことができるため、医療施設で働く人員を減らせるほか、物理的なリソース管理を容易にするなど、医療現場の負担を軽減することができます。

遠隔医療は単にビデオ通話のソフトウェアのことだけを意味するのではありません。診断用途毎にセンサ、デバイスあるいはシステムを利用し、患者のフィジカルデータを収集、データ処理とモニタリングの後、結果としてまとめてから医師や医療機関へと送信される一連のプロセスも含まれます。

 

Frost and Sullivan社のリサーチによると、今年3月にアメリカで遠隔医療を利用した人は50%増加し、遠隔医療サービスを提供する事業者からは、1日あたり15,000件以上のビデオ診察の受付希望者が殺到しているという報告があります。また、2020年を通してみた場合、遠隔医療診察は9億件にのぼると見込まれています。

 

いま私たちが求められている「ソーシャル・ディスタンス」は、新型コロナウィルスのピークアウト後もしばらくは継続されるという見方もあり、専門家の間では、今回の危機がこれまでの人と人との交流の在り方を根本から変えるのではないかと予想されています。つまり、近い将来、遠隔医療のようなテクノロジーを駆使したデジタル・インタラクションが新たな常識となるのです。

 

もちろん、これらの遠隔システムは安全な動作が保証され、患者や利用者のプライバシーが守られるよう、極めて高度なセキュリティとメンテナンスが必要とされます。

 

Eurotech のEveryware IoT は、最先端のビルトイン・セキュリティをデバイス、クラウド、通信のすべてのレベルで保証しています(下図)

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デバイス管理による事業継続性の確保

IoTの大きなメリットの一つに、デバイス管理と呼ばれる現場設備や資産の遠隔管理機能があります。デバイス管理は、これまで独立して機能していたIT(情報技術)とOT(運用技術)を連携させることにより、いつでも現場の機器へとリモートでアクセスし、その管理ができるというものです。

 

新型コロナウィルスが発生する前は、IoTを導入する際、ダッシュボードやデータの可視化が優先され、デバイス管理はそれに次ぐ位置づけでした。しかし今回の感染拡大で、今は逆にデバイス管理が基本、最優先される状況となっています。これはウィルスの感染拡大を防ぐために事業者が操業を停止し、在宅でできる生産活動は一部に限られるためにビジネスが滞り、世界経済が別の危機に直面していることが理由です。医療の現場環境はさらに深刻で、医療従事者の命や健康が脅かされる状況が続いています。

 

EurotechのEveryware IoTのようなビルトインのIoTデバイス管理では、VPN (Virtual Private Network) といういわゆる 「ソーシャル・ディスタンス」を保ちながら、遠隔操作を行うことが可能です。ビジネスマネージャーは生産/統計データを常に分析することができ、オペレーターは機器のステータスの監視など、OTA(Update-Over-The-Air)を利用して、安全に業務にあたることができます。さらに、REST APIで新しいツールを作成し(例:別ソースのダッシュボードとゲートウェイとの連携や、拡張機能ツールとゲートウェイとの統合など)より高度なレベルで管理することも可能です。

 

デバイス管理により、企業や事業者はあらゆる社会的および経済的な緊急事態において、生産またはその一部を維持することができ、医療従事者は伝染病などの環境リスクにさらされることなく、命を救う大切な医療機器の動作の確保など、離れた場所から自らの業務またはその一部に取り組むことができるようになります。

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公衆衛生管理で存在感を増すロボットとAI

Science Roboticsに掲載された最近の記事の中で、「ロボット工学とAIの専門家たちの間では、事業継続性の確保のためにリモートマネジメントが特に重要だという認識で一致している」と書かれています。

 

参考URL: https://robotics.sciencemag.org/content/5/40/eabb5589 (原文は英語)

“今回の新型コロナウィルスの例は、ロボットやAIの専門家、及びサービスプロバイダーに、現場の最前線に出向かなくても迅速に展開ができるリモートアクセスロボットの開発を前進させる、大きなきっかけとなるでしょう。言い換えれば、工場や発電所から廃棄物処理施設に至るまで、専門的なオペレーションを必要とする幅広いアプリケーションにおけるロボティクスの実現に向け、さらなる研究の必要があると言えます。”

例えば、医療ケアにおける病気の予防やスクリーニング検査、診察、病状管理、患者のケアといったタスクは、それぞれ専任の医師やスタッフがリモートでロボットを操作して実行することも、ロボット自体に組み込まれた人工知能(AI)を利用して自律的に実行させることも可能です。

 

また、ロボットは新型コロナウィルスとの闘いにおける有効な手段としてだけでなく、公衆衛生管理の未来を開く鍵となり得るとも専門家たちは考えています。

 

実際の例を見ていきましょう。

 

香港国際空港では新型コロナウィルス対策の一環として、消毒剤の噴射とUVライトの照射ができる自動運転ロボットがターミナル内を廻り殺菌と清掃を行っています。

 

新型コロナウィルス感染拡大の影響が大きい国のうちの2つ、イタリアと中国では、医師と患者の濃厚接触を避けるため、ロボットが病院や医療施設に導入されており、医療スタッフの労働環境の安全を確保するだけでなく、フェイスマスクなどの資源の浪費削減にも成功しています。

 

また、武漢では自動運転型の消毒ロボットが街の至る所で消毒剤を散布しています。

 

ロボット工学において世界の最先端を行く日本では、高齢者介護施設の慢性的な人手不足を補うためにロボットが活用されており、介護者に重い負担がかかる作業の補助や、被介護者の心身のコンディショニングの一翼を担っています。

 

このように、公衆衛生におけるロボット工学とAIの活用事例はますます増えており、その重要度も増しています。

より高い機能が求められるエッジコンピューティング

技術的な観点で見ていくと、上記で挙げてきたようなソリューションを実現するためには、高い演算能力と、信頼性、接続性、耐久性を備えたデバイスおよびシステムが必要です。一方でこれらの機器はできるだけコンパクト、消費電力を低く抑えることが求められます。

 

そして、命を救うための鍵となる人工知能は、遅延(レーテンシー)なしで実行されるよう、電力消費や熱放散などの条件を満たしたシステムに組み込まれている必要があります。

 

ハイパフォーマンス・エンベデッド・コンピューター(HPEC)は、将来のテクノロジーに必要不可欠なものとなるかもしれません。なぜなら高い堅牢性や信頼性を持つHPECをデータセンターからフィールドアプリケーションへと展開することで、データセンターの場所や重量、消費電力を削減しながらも、同様の高度な演算能力とエネルギー効率を実現することができるからです。